2015年7月9日

3度目にして学んだ円満退職するための秘訣



私が前職を退職したのはもう何年も前だが、その時私が社長に呼び出されて面談をした問答の内容は大枠として以下のようなものだったと思う。

『岡本さん、退職届のこと聞いたよ。社労士になるんだってね。』

私『はい。色々と悩みましたが、どうしても諦めきれなくて。』

『そうか。あなたなら出来るだろうね。でも自分で経営するってホントに大変だよ。社労士になるだけなら、うちで働きながらでも出来るんじゃないの?』

私『ありがとうございます。でも社労士というよりは自分で起業したいという思いが強いんです。』

『ほう。今、歳はいくつだっけ?』

私『35歳です。』

『なるほど、確かにギリギリだね。でも、うちはまだまだ成長するし、知ってのとおり新規プロジェクトも立ち上がるので、一層やりがいはあると思うんだ。だから一緒にやらない?』

私『非常にありがたいことですが、やはり自分でやってみたいと思うんです。すみません。』

『うーん。だいぶ意志が固いみたいだね。でもほら、今度のプロジェクトとか絶対面白いと思うんだよね。だからもう少し一緒にやらない?』

私『そうですねぇ…どうしても自分でやるというのには勝てないですね。(って、さっきギリギリって言ったじゃん!)

以下繰り返し

と、詳細はともかくとして、上記の面談中はシリアスな空気が殆どなかった。しかも、終始和やかな雰囲気と言うより何だか「ヌケ感」があって、思わず『まいっか。やっぱ辞めるのやーめた。』となってしまいそうだ。


そもそも前の職場は、社長の人柄もあって上司や経営幹部の方々に懐の広い方が多く、何かトラブルがあった時も、それを楽しんでしまうようなところがあった。もちろん、石橋を叩く人材も必要なのだが、私は前者の下についていた方が結果として自律的に働くことができた。

前職は、私が独立する前に築いた正規職員のキャリアの中での3社目にあたる。言い換えると、私は会社を退職するというイベントを3度経験している。つまり、良くも悪くも退職のためのノウハウを3回分蓄積した訳である。

退職後というのは、常として自分は円満退職したつもりでも、残された側には必ず何かしらの不満や文句が出てくるものだ。いなくなった人間は、残された側にとってスケープゴートつまり責任転嫁の対象になりやすいし、当然、どれだけ結果を残したからと言って後々まで伝説のように美談だけが語り継がれることはまずない。


例えば、退職時にいわゆる競業避止義務(競合他社への転職などを禁止すること)を書面で書かせることがある。が、私個人的には、それは法的に効力を持たないとか、職業選択の自由に反すると言った杓子定規な話の前に、単純にマナーの問題ではないかと思う。

結局、業種を問わず自分の持っているスキルと知識を活かして転職したいと考えるのは至極まっとうな考えだし、特に人材が不足している分野においてそれは顕著に表れる。その上で、より円満に退職したいならノウハウも人脈も可能な限り全て引き継いでいくことだろう。

ただ、営業職の人間などは特にノウハウを共有することを嫌う。実際大した仕事をしている訳でもないのだけれど、新卒など経験の少ない若手社員を除き、教えるための時間も教わるための時間もお互いに奪われたくないと思っている人間は多く、私も例外ではない。

それでも、私は3度目にしてその考えが浅はかであったと思い直した。その理由は3つだ。

一つ目 『立つ鳥跡を濁さず』

自身の区切りのためにも、また次のキャリアへの風評を考えても、いい加減にケツをまくって逃げることは何のプラスにもならない。

二つ目 『人に教えることが何より自分のスキルアップに繋がる』

人に教えるには、自分がそのことについてよく知っていなければならないし、教えていると逆に自分が気付き、教えられることが沢山ある。つまり最良のアウトプットと言える。

三つ目 『100人に教えても最終的に4人しかやらない』

一般に言う2:8のパレートの法則で、教えても実行するのは2割の人間だけであり、残りの人は理解しても実行はしない。そして、2割の中でも継続するのが更にその中の2割の人間だとするとたったの4%である。
つまり、もし自分が持つ貴重なノウハウを無償で提供するのが勿体ないなどと思う方がいてもそれは杞憂に終わるということだ。


先の面談の後、営業会議の場で私の営業方法を共有しようということになり、私は上記の理由に基づいて可能な限りすべてを伝えようと試みた。


と、結果はすぐには出ないので、その後の詳細は知る由もないが、少なくとも私自身はその一連のプロセスを通して多くの気づきを得て、学び、その時点が雇われキャリアの中での集大成となった。


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